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初心者でもわかりやすい!今さら聞けない薬歴・薬歴管理とは?

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薬歴」という言葉を聞いたことはあるでしょうか?

薬剤師以外の職業の方では関わることはほとんど無いものですが、昨今の大手調剤薬局グループの薬歴未記載問題によって、知名度は向上しているかもしれません。

調剤薬局で保険調剤を受けた場合には必ずこの薬歴が記載され、服用状況や相互作用などを管理してもらうこととなります。

 

薬局で薬剤師から薬を渡される時に、詳しく症状などを尋ねられることがあります。

「医師でもないのになぜ?」と思うかもしれませんが、薬剤師は医師が処方した薬が正しいかどうかを確認する最終関門であり、患者の服薬について薬学的に管理しなければなりません。

そしてその管理の際に用いるのが「薬歴」と呼ばれるものです。

カルテやお薬手帳と混同されやすく、イメージもしにくいと思いますので、詳しくご説明いたします。

 

薬歴とは

薬歴の基礎知識

薬歴は正式は「薬剤服用歴管理記録」であり、読んで字のごとく「薬剤の服用歴を管理する記録」のことを指します。薬剤師が行う調剤や服薬指導の内容を記録したもので、適切な服薬指導には欠かせない資料です。

保険調剤上の算定要件の中で、患者あるいはその家族などと対話することにより、患者の服薬状況や服薬期間中の体調の変化、残薬の状況といった情報を収集してその要点を薬歴に記入します。

また薬剤師が行った服薬指導の内容だけではなく、患者が持参した検査値といった記録なども詳しく薬歴に記入します。

このように薬歴は医師の診療録や看護師の看護記録に近しいものになっており、お薬のカルテと呼ばれることもあります。

薬歴 = カルテの薬剤師バージョン

医師が患者さんの病状をカルテによって管理するのと同様に、薬剤師はこの薬歴によって患者さんの薬剤の服用歴を管理するのです。カルテの薬剤師バージョンと思って頂ければ、わかりやすいかと思います。

以前は紙媒体で記録していましたが、コンピュータの発達した現在では、電子薬歴というシステムで、コンピュータ上で管理している施設が多いでしょう。

一般的には最後の薬歴記載から3年間は保管されているので、体調変化やお薬について質問がある場合には、薬局に問い合わせをすると良いでしょう。

 

薬歴に記載されること

それではここで薬歴には具体的にどのようなことが記載されているのかを簡単にご紹介します。

まず患者の氏名・生年月日・性別・被保険者証の記号番号・住所・緊急連絡先といった基礎情報、処方した保険医療機関名・処方医氏名・処方日・処方内容・調剤日・処方内容に関する照会の 内容といった処方および調剤内容が記載されます。

その他にアレルギー歴・副作用歴を含む患者の体質について、既往歴や合併症及び他科受診において加療中の疾患に関するものを含む情報、残薬状況を含む服薬状況や服薬中の体調の変化(副作用が疑われる症状など)について、併用薬の状況や服用薬との相互作用が認められる飲食物の摂取状況についても記載されます。

さらに患者または家族などからの相談事の要点や服薬指導の要点と指導した薬剤師の氏名、後発医薬品の使用に関する患者の意向や手帳による情報提供の状況も薬歴には記載することとなっています。

補足

具体的には、患者さんの基本的な個人情報に加えて、

  • お薬をどのように飲んでいるか
  • 効果は出ているか
  • 副作用は出ていないか
  • 他の病院で出ている薬はないか
  • 余っている薬がある場合には服用方法は正しいのか

などの薬物治療の情報が記載されています。

これにより、治療用量の確認、相互作用や飲み合わせ、副作用の有無などをチェックしてもらえるので、安心してお薬を飲むことが出来るでしょう。

 

薬歴の記載形式

薬歴は患者さんではなく薬剤師が記入するので、基本的には知っておく必要はありませんが、興味がある方の為に薬歴の記載形式についてご説明いたします。

多くの薬歴は、POS(問題志向型システム)に基づいています。これは、患者さんの困っている問題に着目して、一つずつ解決していこうという方法です。

胃痛で受診していれば、この胃痛はどのような原因で起こったのか、どういった薬剤が望ましいのか、どのような生活習慣が望ましいのかなど、問題に志向して解決策を模索していくこととなります。

また、具体的な記載方法としては、SOAP-C形式などが代表的となります。

これはS(Subjective Data:主観的情報)、O(Objective Data:客観的情報)、A(Assessment:アセスメント)、P(Plan:計画)、C(Care:ケアすべき内容)について、項目ごとに記載していく形式となります。

これらを患者さんごとに、時系列に記録していったものが、薬歴となります。

 

薬歴を拒否するとお会計が安くなる?

「お薬手帳を持参するとお会計が安くなる」という話は比較的有名ですが、歴を拒否することでお会計が安くなるということは、あまり知られていません。

これは「薬剤服用歴管理指導料」を算定しないことによるもので、手帳持参の無い場合に比べると150円(3割負担の場合)安くなります。

しかしながら、この方法はあまりお勧めできません。様々な薬剤情報の管理や副作用や飲み合わせの相談などを受けてもらえるという権利を、150円と引き換えに放棄していることになるのです。

また、指導を拒否した場合、有害事象の際に副作用被害救済制度の対象とならない可能性も出てきます。

薬局の立場としては、薬歴拒否があれば現行法では算定せずに対応する薬局が多いと思いますが、患者さんにも多くのデメリットが発生するので、無理に金額を安くしようとするのではなく、お薬手帳を持参することでしっかりと薬剤情報を管理してもらうと良いでしょう。

ちなみに、手帳を持参すると手帳を持参しない場合に比べて40円(3割負担の場合)お会計が安くなります。

 

薬歴管理とは

先述したように薬歴にはたくさんの項目が記載されますが、この薬歴を管理することにどのような意味があるのでしょうか?

まず薬歴管理をすることによって患者の健康被害防止や身体の安全に寄与します。服薬指導の際に飲み合わせやアレルギーなどの患者個人が持つ特有の情報がないかを薬歴で確認することで、適切な医薬品を選択して使用することができます。

また他の医療機関で処方された薬剤が重複している場合は、その薬剤を減らすこともできます。

さらに薬歴管理によって、その薬局の薬剤師全員が患者の服薬状況などを共有することができます。1人の患者に対して同じ薬剤師が毎回対応できるわけではありませんから、薬歴があることでどの薬剤師でも患者に服薬指導ができるようになります。

このように薬歴管理とは、重複投与を避けたり副作用防止や服薬指導をしたりするために重要な薬剤師の業務の1つです。

 

プライバシー保護と開示

患者の服薬指導をする上で重要な役割を持つ薬歴ですが、れっきとした個人情報です。したがってその扱いは「医療・介護関係事業者における個人情報の適切な取扱いのためガイドラン(厚生労働省)」を遵守しなければなりません。

そして患者から求められた場合には、可能な限り薬歴の開示に応じることとなっています。もちろんその際は本人確認が行われます。

ただし抗がん剤の投与など、患者に開示することが適当かどうか疑義のある場合には、病名の告知の有無などを医師に確認して相談します。

また開示した場合は、開示した日時や薬剤師名の他に開示後の患者の反応なども薬歴に記載されます。

 

まとめ

薬歴とは患者情報を集積したものであり、適切な服薬指導のための重要な資料です。

そのため薬剤師から症状などについて詳細を尋ねられた場合や、お薬手帳やアンケートなど、面倒だと思うかもしれませんが自身の健康のためにも積極的に協力したほうがよいでしょう。

患者さん側も積極的に薬歴作りに協力をすることが出来れば、より良い治療成果を得ることが出来るでしょう。

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