調剤薬局を利用する立場からすると、調剤薬局事務は受付に座ってパソコンに何か入力している以外は会計をしているだけで、他にどのような仕事をしているのかわかりづらいかもしれません。そのせいか、調剤薬局事務は楽な仕事だと思われることも少なくありません。
しかし調剤薬局事務という職業は、調剤薬局を経営していく上で欠かせない存在なのです。そこでここでは、調剤薬局事務という仕事の重要性や必要性について詳しくご紹介しますね。
日本の医療制度
調剤薬局があってこその調剤薬局事務であるため、まずは調剤薬局の必要性について述べたいところですが、その前に基本的な制度について確認しておきましょう。
現在、我が国の医療保険制度には、全ての国民が何らかの公的医療保険に加入する「国民皆保険制度」があります。これにより、すべての国民がしかるべき医療機関で保険診療を受けることが可能になりました。
そして日本は医薬分業制度でもあるため、保険診療に基づいて医師の出す処方せんに従い、保険薬局が調剤を行います。
ちなみに、一般的に使われている調剤薬局という呼び方は正しい名称ではなく、法律上の正式名称は保険薬局と言います。しかしながら、「保険薬局の調剤薬局事務」と言うと少しややこしいため、ここでは調剤薬局という名称のほうを用いています。
医薬分業により調剤薬局は必要
さて、前述でも少し出てきた「医薬分業制度」により、調剤薬局の存在はわれわれの生活にとって当たり前のものとなりました。医薬分業とは簡単に言うと、患者さんの診察や処方と、処方せんに基づく調剤・服薬指導・薬歴管理をそれぞれ独立して行う制度のことです。つまり医薬分業制度がある限り、保険調剤を行う薬局は独立した存在として必要であるということです。
しかしながら全国の薬局数は年々増加傾向にあり、平成28年度末には実に58,678か所もの薬局があるため、一部の地域ではすでに薬局の数が飽和状態にあることも確かです。患者さんが薬局を選ぶ時代となった今、他の調剤薬局との差別化を図る必要があります。
その結果淘汰される薬局が現れ、将来的に薬局の総数が減少していく可能性がありますが、国が医薬分業を推進する限り全ての薬局がなくなることはないでしょう。したがって、そこで働く薬剤師と調剤薬局事務の存在も不可欠です。
調剤薬局事務はわかりにくい
先述から、「調剤薬局がわれわれの生活に密接したものであり、必要性があるということはわかった。そこで調剤を行う薬剤師が必要であることもわかる。それなら、調剤薬局事務は何をするために必要なのか」という疑問を抱くかもしれません。
患者さん目線で調剤薬局事務を見ると、ほとんどが「受付の人」というイメージで固定されているはずです。
「受付に座り、患者さんがやって来たら応対し、処方せんを受け取った後はパソコンを操作しはじめ、薬剤師が患者さんに薬を渡し終えたら会計をする」というのが、患者さんが知る調剤薬局事務の姿ではないでしょうか。
それゆえに、外から見ると調剤薬局事務が具体的にどのような仕事を受け持っているのかがわかりにくいのかもしれません。しかしながら、調剤薬局事務にもきちんと役割があります。
調剤薬局事務の役割
調剤薬局事務の役割、それは薬剤師や患者さんのサポートをすることです。
例えば電話で医療機関に処方せん内容の確認を取ったり、医療機関からの医薬品の在庫の問い合わせに応対したりするなど、薬剤師でなければ対応できない業務以外は調剤薬局事務が行います。その他にも軟膏を入れる容器を用意するなどの細かい作業や準備を行うこともあり、薬剤師が調剤に集中できるようにサポートします。
また、患者さんが車椅子で来局された際には薬局のドアを開けておくなど、手助けが必要な患者さんへのサポートも行います。
さらに、調剤薬局事務は最初に患者さんと接することもあり、患者さんの要望や質問を聞くことが多いです。したがって、患者さんと薬剤師の橋渡しをする役割もあります。
まとめ
こうした薬剤師や患者さんに対するサポートや気遣いは、日々の薬局の営業、ひいては信頼できる薬局を経営していく上で重要な要素です。
その役割を担う調剤薬局事務の存在は、必要不可欠だと言えるでしょう。
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