零売薬局とは？処方箋がなくても医薬品が買える仕組みを解説

調剤薬局で勤めていると、ときどき「前に出してもらった薬がなくなったからまた同じ薬を売ってほしい」と頼まれることもあります。多くの場合、処方箋なしで薬を売ることはできません。

しかし実は、処方箋がなくても、一部の医療用医薬品を購入することができる「零売薬局」というものがあります。

零売薬局とは？

零売とは分割販売とも呼ばれ、医薬品の販売形態のひとつです。患者が自分の症状が把握できている場合に限り、医薬品の専門家である薬剤師がカウンセリングを行った上で、医療用医薬品の一部を処方箋なしで販売することができます。

また、そのための条件として

「必要最低限の数量に限定する」
「相互作用・重複投薬防止のために薬歴を管理する」
「薬局において薬剤師が対面により販売をする」

ということが厚生労働省より定められています。

零売自体は以前から存在していますが、医療用医薬品は本来、医師の処方箋に基づく薬剤の交付が原則であるため、零売を行っている薬局の数は少ないです。

したがって、今まであまり認知されていませんでしたが、「忙しくて病院に行くひまがない」「病院の薬を継続的に使用する事が困難」などのライフスタイルや患者のニーズの多様化が進んだことで、注目されるようになりました。

どのような人が零売薬局を利用するのか

零売薬局を利用する人の中で特に多い理由が「仕事が終わる時間が遅く、診察時間内に受信できない」「会社の昼休みの時間が、病院の昼休みと重なるため受診できない」といった、診察時間内に受診することができないケースです。

他にも、花粉症の薬など、継続的に使用している医薬品があり、「病院に行く時間はないけど、処方されている薬を継続して使いたい」という人も多いです。

零売薬局で購入できる医薬品には、痛み止めや抗アレルギー剤、胃腸薬、かぜ薬、ステロイド軟膏などがあり、さまざまな事情で医療機関にかかることができない人たちに、零売薬局を利用するという選択肢が広がりつつあります。

しかしながら、医療機関への受診が大前提ですから、病院などに行く必要がなくなったわけではないということを忘れないでください。

零売薬局のメリット・デメリット

零売のよい点

零売のメリットには、まず「時間の節約」が挙げられます。基本的に医薬品を手に入れるには、医療機関を受診して医師の診察を受け、処方箋の交付を受ける必要があります。

そして、その処方箋を調剤薬局に持って行って薬剤師に調剤してもらい、服薬指導を受けてからようやく薬を手に入れることができます。

医療機関や薬局が混んでいる場合は、何時間も待たなくてはなりませんが、欲しい薬がある程度決まっているのなら、零売薬局を利用すれば待ち時間がなくなるので便利です。

また診察を受けず、調剤もしないので、受診費用や調剤料を節約することができるのも、メリットです。薬価が安い医薬品や欲しい医薬品の量が少ない場合には、零売薬局を利用するのがよいかもしれません。

零売の問題点

まず、医師の診察を受けないので、重大な疾病を見落としてしまう可能性があることが問題点の1つとして挙げられます。

また、処方箋を介さずに医療用医薬品を交付することは、周辺の医療機関の受診抑制に繋がります。したがって、近くの医療機関や調剤薬局の収益が減少するため、零売薬局が目の敵にされる可能性もあります。

そして零売薬局は単純に利益が出にくいという問題点もあります。調剤薬局では、近くの医療機関からの処方箋がある程度見込めたり、調剤基本料や薬学管理料によって調剤報酬が担保されていたりすることから、一定の利益を確保することができます。

しかし、零売薬局ではこれらの処方箋による収益は見込めず、高額の医薬品購入も少ないため、利益が出にくいです。

まとめ

零売薬局とは、一部の医療用医薬品を処方箋なしで購入することができる薬局のことを言います。

診察時間内に受診することが難しい人などにとってはありがたい存在ですが、零売薬局自身には利益が出にくいなどの問題点もあるようです。

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