こんにちは、医療事務ブロガーの元ヤン次女です!
「レセプトのオンライン請求って何をするの?」
「従来の請求との違いは?」
医療事務にとって、レセプト請求とは切っても切れない関係です。
しかしながら、1ヵ月に1度しか行わない業務であることから、苦手な医療事務さんも少なくありません。
オンラインを使った請求となると、なおさら複雑です。
そんな方に向けて、ここではオンライン請求とは何か、また紙請求の違いやそもそもレセプト業務とはどういった業務なのかについてお話します。
すでにオンライン請求をしたことがある人はもちろん、これからオンライン請求を検討しているクリニックさんや制度の仕組みを知りたい人にも役立つ内容となっています。
平成18年4月10日付けの請求省令改正により、保険医療機関・保険薬局による診療報酬などの請求方法としてオンラインによる方法が追加されました。
時代はオンラインレセプト請求が基本となります。
ぜひ、この記事で知識を身につけていって下さいね。
それでは、どうぞ!
もくじ
解説ショート動画:レセプトのオンライン請求のメリット・デメリット
この記事の内容は、以下のYouTubeショート動画でも解説しています。サクサク理解したい方は動画もチェックしてください。
https://www.youtube.com/watch?v=AedTr5NkB2o
レセプト業務の基礎知識
基礎①:レセプト業務とは何か?
レセプトのオンライン請求について説明する前に、そもそもレセプト業務とは具体的にどのような業務なのかについてお話しなければなりません。
①患者は病院で診察を受けます。
②患者は病院にお金(一部負担金)を支払います。
③残りのお金を請求するために、レセプトを支払基金に提出します。
④残りのお金を病院が受け取ることができます。
医療機関(病院やクリニック)の収益のほとんどを占める診療報酬(病院への収入)は、保険適用の場合において患者さんからは一部負担金として最大3割の金額が支払われます。
そして残りの7割以上の金額を、その患者さんの保険証を発行している健康保険組合・共済組合・市区町村などが支払います。
したがって診療報酬をすべて受け取るためには、健康保険組合・共済組合・市区町村などが負担している診療報酬の7割以上の部分を、請求しなければなりません。
その際に、レセプト(診療報酬明細書)を作成し審査支払機関を通して請求することをレセプト業務と言います。
基礎②:どのようにして診療報酬は支払われるのか?
もう少し詳しく、診療報酬の支払いの仕組みについてご説明しましょう。
前述したように保険診療を行った場合は最大3割の診療報酬を患者さんに、残りの7割以上を健康保険組合・共済組合・市区町村などの保険者に支払ってもらいます。
患者さんには来院のたびに診療報酬を請求することができます(図の②)が、保険者に対して同じように請求することは作業量が膨大になり手に負えません。
そのため保険者への請求は、1ヶ月ごとにまとめて請求することになっています。(図の③)
また医療機関が保険者から診療報酬を支払ってもらうときは、実際には保険者へ直接請求するわけではありません。
医療機関と保険者の間には、審査支払機関という「その請求が正しいかどうか」を判断する機関があり、その審査支払機関を通して保険者に請求します。
レセプト業務の具体的な流れ
次に、実際のレセプト業務の流れについて簡単にご説明します。
まず審査支払機関へのレセプトの提出期限は、その診療を行った翌月の10日と決められています。
2022年7月の診療分は、翌月の2022年8月10日までに提出しなければいけません。
提出に必要なのは「診療報酬請求書」と、患者さんごとに処方した薬の内容やそれに応じた診療報酬点数などが1ヶ月分まとめて記載された書類である「レセプト(診療報酬明細書)」です。
普段からレセプトのベースとなる情報をレセコンに入力していることから、レセコンが自動的に1ヶ月分の診療内容や診療報酬を集計して出力してくれます。
そのため、レセプト(診療報酬明細書)の作成は難しくありません。
その後レセプトの点検をして審査支払機関に提出し、審査支払機関はその内容を確認して問題がなければ保険者に診療報酬を請求するという流れです。
そして審査支払機関の請求に応じた保険者が、審査支払機関を通して医療機関に診療報酬を支払います。
レセプトオンライン請求とは?
レセプトのオンライン請求とは、先にも述べた診療報酬の残りの7割以上の金額を支払ってもらうために、審査支払機関に提出する請求をオンラインで行うことを指します。
社会保険診療報酬支払基金のデータによると、レセプトオンライン請求の普及率は以下の通りです。
- オンライン:63.3%
- 電子媒体 :31.9%
- 紙レセプト:4.8%
ちなみに電子媒体とは、FD(フレキシブルディスク)、MO(光ディスク)CD-R(光ディスク)のことを指します。中でもCD-Rが一般的です。
レセプトの請求は、「原則として電子レセプト請求(電子情報処理組織の使用による請求(オンラインによる請求))又は光ディスク等を用いた請求(電子媒体による請求))により行う」と定められています。
レセプトオンライン請求のメリット
ここからは、レセプトオンライン請求を導入することで得られるメリットについて解説します。
主なメリットは以下の通りです。
- ①受付時間が長い
- ②紙の印刷が不要になる
- ③搬送・郵送のリスクがない
- ④レセ事前チェックが自動化される
- ⑤返戻レセプトもデータで受け取れる
利点①:受付時間が長い
レセプトオンライン請求のメリット1つ目は、提出可能となる時間が長いことです。
「オンライン請求」と「電子媒体・紙レセプト」では、提出の受付時間が異なります。
以下は、社会保険診療報酬支払基金のオンライン請求と電子媒体・紙レセプトの提出について、まとめた表になります。
オンライン請求 | 電子媒体・紙レセプト |
---|---|
5日~7日 8:00~21:00 8日~10日 8:00~24:00 |
5日~10日 9:00~17:30 |
土・日・祝日も送信可能 | 土・日・祝日は提出不可 |
データによる提出 | 郵便 or 直接持ち込み |
オンライン請求は土日祝日を関係なく、いつでも提出できるのに対して、電子媒体・紙レセプトは、土日祝日の持ち込みは不可となっています。
提出受付時間も、オンライン請求の方が長く、電子媒体・紙レセプトが短いです。
曜日や時間の制限がオンライン請求では緩和されているということがわかります!
このようにオンライン請求の方が、受付時間に余裕があるため医療事務や院長先生の負担は軽減されます。
利点②:紙の印刷が不要になる
レセプトオンライン請求のメリット2つ目は、経費の節約ができることです。
オンライン請求を取り入れることにより、
- 紙レセプトを印刷
- 続紙を貼り付けたり編纂作業
など、無駄な作業が削減されます。そのため、作業時間も大幅に軽減され利便性が高くなります。
また、提出用の紙レセプトの印刷が不要になるので、用紙やインク代のコストが削減できることも、導入メリットの1つと言えます。
利点③:搬送・郵送のリスクがない
レセプトオンライン請求のメリット3つ目は、誤配達・紛失のリスクを避けられることです。
従来の郵送の方法では、以下のようなデメリットが生じてします。
- 郵送の手間
- 郵送中の破損
- 紛失
- 誤配達
一方、オンライン請求を用いることにより、これらの郵送時に生じるリスクを回避することができます。
1つでも不安要素を少なくして、レセプトを提出したいものですよね。
利点④:レセ事前チェックが自動化される
レセプトオンライン請求のメリット4つ目は、事務点検の機能(ASP)により事前にエラーチェックすることができることです。
オンライン請求を受付する際に、提出先のシステムによって自動的にレセプトをチェックできる機能があります。
- 患者の氏名の記入漏れ
- 保険者番号抜け、記号番号抜け
- コメントに外字が含まれている
- 診療開始日に昭和以前の年号が記録されている etc
このように、単純な不備を未然に防ぐことができるため、返戻レセプトを減らすことができます。
結果として、医療事務さんの負担を軽減することができます!
利点⑤:返戻レセプトもデータで受け取れる
レセプトオンライン請求のメリット5つ目は、返戻レセプトをデータで受け取れることです。
オンライン請求を実施している医療機関の場合、返戻レセプトは「紙」と「電子データ」の2種類の返戻レセプトを受け取ることができます。
電子データで受け取る場合は、オンライン上でCSV形式のデータとしてダウンロードすることが可能です。
- 返戻データをオンラインでダウンロードする
- レセプトコンピュータで返戻レセプトの取り込みをする
- 返戻内容を確認して「患者情報」「診療行為」「病名」を修正する
- 修正データを翌月以降の当月分請求と併せて提出する
「紙」による返戻処理をすることもできますが、オンラインによる返戻再請求を推奨されています。
その理由は、ASP(事前点検)ができる事や、電子データで1つに集約することにより管理しやすくなるからです。
今後、電子データで返戻処理をする医療機関がスタンダードになるでしょう!
レセプトオンライン請求のデメリット
さて、ここからはオンライン請求の短所について解説します。
- ①導入費用が必要
- ②個人情報流出・漏えいのリスク
- ③医療事務にITスキルが求められる
欠点①:導入費用が必要
レセプトオンライン請求のデメリット1つ目は、導入するための初期費用が必要であることです。
以下は、社会保険診療報酬支払基金が算出した初期費用の概算です。
- オンライン請求用ノートパソコン:10万円
- 外付CD/DVDドライブ:1万円
- 電子証明書発行料:1,500円
- インターネット接続の初期費用:28,000円
⇒合計:139,500円
※その他、月額のインターンネット接続費用は6,000円と概算する。
また、上記の費用以外にも、初期設定をシステムベンダーへ依頼する場合は、それらの費用も追加する必要があります。
つまり、オンライン請求を導入するためには相場は、おおよそ150,000円ほどの初期費用であることが分かります。
欠点②:個人情報流出・漏えいのリスク
レセプトオンライン請求のデメリット2つ目は、情報漏えいのリスクがあることです。
レセプトは患者情報(患者氏名・生年月日・アレルギー情報・家族歴)や病名情報などが記載されており、個人情報として扱われます。
そのため、情報漏洩をしてしまった場合は、医療機関の「社会的信用が低下」だけではなく、損害倍書責任が発生することもあるため注意が必要です。
オンライン請求は、インターネットを介して診療報酬データを送信するにあたり、どうしても情報漏洩をしてしまう可能性があります。
- 第三者による「サイバー攻撃」
- 不正アクセス
- マルウェア感染
情報漏洩が発生しないように、普段からセキュリティ対策や従業員の定期的な教育など、検討することが必要です。
欠点③:医療事務にITスキルが求められる
レセプトオンライン請求のデメリット3つ目は、医療事務さんのITスキルが必要となることです。
レセプトオンライン請求は、主に医療事務さんが対応する業務です。
そのため、「レセプト作成⇒点検⇒データ修正⇒オンライン提出」までの一連の流れを習得したITスキルのある医療事務さんの存在が必要不可欠です。
医療機関内にオンライン請求の経験者がいない場合は、システムベンダーの教育を依頼するなどして、医療事務さんの全般的な知識をつける必要があります。
まとめ:レセプトオンライン請求はメリットがいっぱい!
今回の記事では、レセプトオンライン請求の基礎知識から、導入するメリットデメリットを解説しました。
- レセプトオンライン請求とは、レセプトデータをオンラインで提出すること
- レセプトオンライン請求は受付時間が長く、利便性が高いこと
- オンライン請求は、時間や経費などのコスト削減や業務効率化といったメリットがあること
- 導入するためには、初期費用のほか、ITスキルのある医療事務さんが必要不可欠であること
このように、オンライン請求はメリットがたくさんあることが分かりました。
ただし、導入から実際の請求までは、医療事務さんのハードルは高いため注意が必要です。
その反面、オンライン請求業務を習得している医療事務さんは、どこに行っても重宝される人材であることは間違いありません。
ぜひ知識をつけて、どこでも活躍できる医療事務さんになってくださいね。応援しています!
最後まで、読んで頂きありがとうございました。
今回の記事で分かること