医療費の増加を防ぐ対策として、国民が自分の健康を自分で管理することを奨励する「セルフメディケーション税制」が登場したことにより、最近では未病や予防医療への意識が高まっています。
そしてその役割を果たす重要な拠点であるドラッグストアには、調剤市場にも力を入れているところが増えています。
ここでは、ドラッグストアが調剤市場に参入する本当の理由と、ドラッグストアが調剤を行うメリットについて、誰でも理解できるようになるべく簡単な言葉を用いてご紹介していきます。
もくじ
ドラッグストアが調剤を行うメリット
集客と売上増のため
ドラッグストアが調剤を行うメリットは、単純に集客と売上増が見込めるからということが挙げられるでしょう。
もともとドラッグストアは、いわゆる市販薬と呼ばれるOTC(一般用)医薬品や日用品、化粧品などを展開してきました。これらに加え、近年では食品にも力を入れるドラッグストアが随分と増えました。
こうした薬や食品、生活雑貨などの生活に必要なものを1ヶ所で手に入れることができる点が、特に高齢者から支持されています。
調剤と買い物で利便性◯
そこでさらに調剤も行えるとなれば、もはや利便性において調剤薬局に勝ち目はないため、多くの処方箋が集まりやすいでしょう。
またドラッグストアの売上のほとんどを食品や化粧品が支えていることから、売上のほとんどを調剤業務に頼っている調剤薬局とは違い調剤報酬改定の影響が受けづらく、調剤市場に参入しても安定した売上が維持できるということも特筆すべき点です。
変革を求められるドラッグストアのビジネスモデル
現在ドラッグストア業界では、医薬品はもちろん食品や日用品なども取り扱うことが一般的となっています。これにより小型の食品スーパーや、「身近で便利」なコンビニエンスストアなどとの同一化や競合が問題になり、ドラッグストアの変革が必要とされています。
それでは今後ドラッグストアは、どのように変化していくべきなのでしょうか?そんなドラッグストアの新たなビジネスモデルのカギとなるのが「買物弱者」にあります。
買物弱者とは買物難民とも言い、高齢化や単身世帯の増加・既存商店街の衰退・地元小売業の廃業・対象の地域における公共交通機関の廃止などによって、過疎地域だけでなく都市部においても高齢者を中心に食料品や生活用品などの購入や飲食に不便や困難を感じる人達のことを指します。
ドラッグストアが調剤市場に参入する理由
経済産業省は「セルフメディケーション推進に向けた ドラッグストアのあり方に関する研究会」において「生活必需品を取り揃え、調剤機能も併せ持つこともあるドラッグストアには、買物弱者への対策においても多様な役割を果たすことが期待される」として「医薬品等を活用した買物弱者対策等の取組の強化」を提言しています。
具体的には、在宅調剤の強化や介護情報の提供、通信販売を活用した遠隔地へのOTC(一般用)医薬品の配送などです。
こうした背景により、一部の大手ドラッグストアでは調剤併設店舗を増やして調剤市場に参入する新しいビジネスモデルに取り組んでいます。
調剤事業に力を入れるドラッグストア
買物弱者をターゲットにした取り組み以外にも、ドラッグストアが調剤事業に力を入れる理由はあります。2014年6月12日から変わった医薬品販売制度により、OTC(一般用)医薬品のインターネット販売が解禁されました。これによりOTC(一般用)医薬品市場の競合が激しくなる中で、新たな収益の柱として調剤事業に注力しているのです。
ドラッグストア業界では、すでに大手を中心に繁華街などの面分業薬局や、大病院・中小病院・医院の門前薬局として、調剤併設店舗や調剤専門店舗を積極的に展開しています。
また大手のドラッグストアでは、医療機関と連携して医療分野への進出とさらなる調剤事業の拡大を目指し、新しく調剤専門会社を設立して薬剤師採用に力を注いでいます。
まとめ
予防医療や買物弱者への取り組み、競合するスーパーやコンビニといった異業態との差別化など、ドラッグストアが調剤市場に参入する背景にはさまざまな理由があります。
しかしながら地域の人々の健康を包括的にサポートすることができるようになるため、業界への追い風となるはずです。
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