求人広告や転職サイトを見ていると、医療事務のお給料は決して高くありません。
厚生労働省の「平成29年賃金構造基本統計調査」によると、女性の平均年収は246.1千円(41.1歳、勤続9.4年)で、前年と比べると0.6%アップして過去最高になっているとか。ただ雇用形態や職種、年齢などさまざま条件により格差はあるようです。
今回は「安い」といわれる医療事務のお給料事情について考えてみましょう。
正規雇用が少ない医療事務
医療事務の職場としては、大きく分けて病院・歯科医院・調剤薬局・介護施設になります。その中でも大学病院から小さな町の診療所など規模はいろいろ。町の小さなクリニックを例にとれば先生が1人で経営しているということがほとんどです。
日本商工会議所が行った「人材ニーズ調査」では、正社員の比率は全職種平均が46.56%に対し、医療事務は43.05%。契約(嘱託)は9.67%に対し、医療事務は17.72%で、派遣は2.51%に対し、12.57%と非正規雇用の比率が高いことがわかっています。
(表:雇用形態別のニーズ状況)
医療事務 | 全職種平均 | |
---|---|---|
正規社員 | 43.05% | 46.56% |
契約社員 | 17.72% | 9.67% |
アルバイト | 24.30% | 24.26% |
派遣 | 12.57% | 2.51% |
業務委託 | 0% | 10.82% |
その他 | 0% | 0.54% |
不明 | 2.36% | 5.64% |

医療事務職は、一般の職業よりも正規社員の雇用ニーズが少ない。その分、契約社員や派遣社員としての働き手の需要が多いことがわかります。
正規雇用と非正規雇用の給料格差
厚生労働省の「平成29年賃金構造基本統計調査」によると、非正規雇用の女性平均年収は189.7千円となっています。正規雇用との差は56.4千円。正規雇用は月の平均収入は20.5千円、非正規雇用は15.8千円となっています。
同じ非正規雇用であっても国家資格を持つ看護師や薬剤師のお給料は比較的高いですが、民間資格である医療事務のお給料は安いと言わざるを得ません。日本商工会議所の「人材ニーズ調査」では、81.17%の医療事務従事者の平均年収が300万円未満。全業種平均では39.73%に比べると確かに「安い」ですね。
(表:医療事務の平均年収)
医療事務 | 全職種平均 | |
---|---|---|
300万円未満 | 81.17% | 39.73% |
300〜500万円未満 | 13.28% | 37.89% |
500〜700万円未満 | 0.23% | 7.21% |
700〜1000万円未満 | 0% | 1.85% |
1000万円以上 | 0% | 0.33% |
未定 | 3.14% | 6.71% |
不明 | 2.19% | 6.27% |

医療事務職は、一般の職業よりも給料が明らかに少ない。
資格があってもお給料に反映されないのはなぜ?

同じ医療系の看護師や薬剤師に比べ、なぜ医療事務のお給料は安いのでしょうか。
それは医療事務の職業が人気だからという理由ににほかなりません。みんななりたい職業というのは経営者も安く雇うことができるため、給料が必然的に安くなります(スターバックスの店員も同様の理由で賃金が安い。)
その反面、薬剤師も看護師も専門性が高く、なり手が少ないため、どの職場も人材不足。国家資格であるということ、売り手市場ということもあり、一度免許を取ってしまうといつでも転職や復職が可能でお給料も比較的高いというわけですね。
女性にとっての「働きやすさ」が魅力

お給料が安いといわれながらも人気の医療事務。その理由は、女性にとって働きやすい職場であることが挙げられます。
小さなクリニックで最小限のスタッフで回している場合は、休みが取りにくいところもあるかもしれませんが、ほとんどのところは、複数のスタッフでワーキングシェアしているのでやりくりしやすいようです。
また、大学病院などでは派遣会社からスタッフを雇用している場合が多いので、休みがとりやすく、子どもが小さいときは助かるという声もよくききます。
結婚・出産・子離れと女性のライフスタイルに合わせて、非正規雇用から正規雇用へとキャリアップができるのも人気のポイントなのかもしれません。
まとめ
「資格をもっていてもゼロからのスタート」である医療事務。でも裏を返せば、年齢や性別に関わらずキャリアを積み、仕事ができる人が有利な職種ということでもあります。
一般企業であれば、年齢が高くなるほど再雇用のチャンスは激減。またお給料も安く、企業の実績によっては真っ先に切り捨てられる可能性があります。その点、どの都市にでも必ずあり、生活になくてはならない医療機関はどの時代でも必ずある職場。
企業は利益の追求が目的ですが、医療行為は非営利組織にしか設立が認められていない公益的な仕事です。家庭を持ち、一度退職しても、子どもの成長や介護などのライフスタイルの変化に強い医療事務は、お給料は安くても、安定した収入が得られる、女性にとって働きやすい仕事といえそうです。
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