こんにちは、医療事務・医事会計システム・インストラクターの元ヤンキーです。
医療事務の仕事をされている方、医療事務を目指している方から「診療録(しんりょうろく)って何?」「カルテって何だろう?」というご相談をいただきます。
というわけで、今回はそんな方向けに、「カルテの基本知識-完全ガイド-」を作成しました。
この記事を読めば、カルテの役割や医療機関でのどのように使われているかがわかりますよ!
それでは、どうぞ!!
もくじ
カルテとは
カルテとは、医療に関して患者の診療内容や処方薬、診療経過などを記録したもののことです。
一般的に知られているカルテという言葉は、元々「カード」という意味を表すドイツ語で、診療録のことを指します。
カルテ = 診療録(しんりょうろく)
カルテは、狭義には医師が記入するものを指します。
そして広義には、手術記録・検査記録・看護記録などを含めた診療に関する記録の総称を言います。
カルテを記載する3つの目的
カルテを記載する目的は、主に以下の3つの理由があります。
- ①法律上の医師の義務
- ②診療・治療に必要な記録のため
- ③保険請求の裏付け
誰でも分かりやすく解説していきますね。
目的①:カルテを書くことは医師の義務
カルテの目的1つ目は、法律上の義務だからです。
医師法第二十四条に「医師は、診療をしたときは、遅滞なく診療に関する事項を診療録に記載しなければならない。」記載があるため、カルテ記載は医師の義務です。
カルテの記載は義務であるということ以外にも、医学上の資料として重要な役割を持ちます。それだけでなく、訴訟での証拠資料や会計上の原本となるなど、社会的機能を有する書類でもあるため、その扱いも大事なものとしなければなりません。
ちなみに一定の条件を満たすことで、
- 「診断書、診療録および処方箋の作成」
- 「主治医意見書の作成」
- 「診察や検査の予約」
を、医師事務作業補助業務として医師の指示のもと事務職員が記載代行することが認められています。
医師事務作業補助者とは、医師の負担軽減を目的とした「医師の事務作業を補助する従事者」のことです。
目的②:診療・治療に必要な記録
カルテの目的2つ目は、患者の診療・治療の経過観察としての記録です。
- 患者データ(氏名・性別・年齢・住所)
- 病名データ(傷病名、転帰日)
- 診療内容(処方、処置、手術)
等、患者一人ひとりの状態を、時系列に正しく記録するためにカルテを記載します。
そのデータをもとに、チーム医療の情報共有がスムーズになり、これからの正しい治療内容を判断するための資料となります。
カルテは医師だけが閲覧するものと思われがち。けど、現場では看護師、医療事務などすべての医療従事者が共有して閲覧するものです。
目的③:保険請求の裏付け
カルテの目的3つ目は、保険請求の根拠としての役割です。
カルテの記録から保険請求が算出されます。具体例を見ていきましょう。
- [医師]が診察をする
- [医師]が当日の診療内容をカルテに記載する
- 記載された内容を[医療事務]がレセプトコンピュータにデータ入力を行う
- 自動計算された料金を[医療事務]が患者に請求する
このように、カルテの記録を基にして、保険請求を算出するために利用されています。
これが医療事務のメインとなる仕事内容ですね。
カルテの種類と1号・2号・3号用紙の違い
カルテ用紙には、カルテ用紙1号・カルテ用紙2号・カルテ用紙3号と、3種類あります。
それぞれの役割は、以下の通りです。
- カルテ用紙1号:診療録の表紙
- カルテ用紙2号:診療内容の記載の続紙
- カルテ用紙3号:会計欄(未使用の医療機関が多い)
種類①:カルテ1号用紙
カルテ1号用紙の役割は、カルテの表紙です。
- 「患者住所・氏名・性別・年齢」
- 「病名及び主要症状」
- 「治療方法(処方や処置)」
- 「診療年月日」
の4つの項目については、医師法第23条により、カルテに最低限記載することを定められています。
他には、既往歴、診療費、嗜好、アレルギー、家族歴などの項目が記載されるので、個人情報の塊であるカルテの取り扱いには十分気をつけなければなりません。
カルテ1号用紙のサンプル
種類②:カルテ2号用紙
カルテ2号用紙の役割は、診療内容の記載です。
患者一人ひとりの日々の診療内容を記録するものとなります。SOAP形式(ソープ)を採用して、記録していることが一般的です。
- S(subjective):主観的情報
⇒「夕方より頭痛」など患者が話した内容 - O(objective):客観的情報
⇒「顔色がよくなってきた」など客観的な内容 - A(assessment):評価
⇒SとOにより総合的な評価 - P(plan):計画(治療)
⇒Aに基づいたこれからの治療方針
カルテにはよく略語が記載されます。
例えば「do」は「ditto(ディトゥ)」の略語で、「繰り返し」や「コピー」を意味し、「do」と記載するだけで「前回と同じ処方」ということを示すことができ、「前回do」や「do処方」などのように使われます。
また、「Rp.」は「recipe(レシピ)」の略語で、「処方」を意味し、処方する薬を記載するときに使用します。
この2つの略語は医療事務の資格試験でも目にすることが多く、実務でもよく使われます。
カルテ2号用紙のサンプル
種類③:カルテ3号用紙
カルテ3号用紙の役割は、会計欄です。
診察が終わった後に、患者への請求額を計算するためにある用紙です。
しかし、近年では多くの医療機関でレセプトコンピュータが導入されています。このコンピュータが当日の会計を自動算出してくれるため、カルテ3号用紙を利用している医療機関は、ゼロに近いでしょう。
カルテ3号用紙のサンプル
カルテの保存期間は5年
カルテの保存期間は5年
カルテの保存に関して、医師法第24条では
「前項の診療録であって、病院または診療所に勤務する医師のした診療に関するものは、その病院又は診療所の管理者において、その他の診療に関するものは、その医師において、5年間これを保存しなければならない。」
と定められています。
その他の記録は3年
また、療養担当規則第9条でも
「保険医療機関は、療養の給付の担当に関する帳簿及び書類その他の記録をその完結の日から三年間保存しなければならない。ただし、患者の診療録にあっては、その完結の日から五年間とする。」
と定められています。
これらのことにより、医療機関にはカルテを保存する義務があり、その期間は5年間と決められています。
紙カルテの今後と「電子カルテ」への移行
紙のカルテを使っている医療機関は多いですが、保管場所や管理の大変さなどの悩みはつきません。
一方、電子カルテの場合は、保管場所や管理に困らないだけでなく、ネットの環境さえあれば、医療機関内はもとより往診時もPCやタブレットからリアルタイムで情報を共有したり、閲覧したりできるため、診療記録の素早い伝達が可能になります。
また、「紙カルテがなくて作業が停滞する」などの不便さがなくなって、他の職種との連携がスムーズになり、チーム医療の推進に役立ちます。
こうしたメリットにより、現在では電子カルテの普及が進んでいます。既存の医療機関では、紙カルテから電子カルテに移行するケースが増えており、新規開業する医療機関では最初から電子カルテを導入しています。
まとめ:カルテは病院の財産!正しく理解しましょう。
今回の記事では、カルテの役割や記載方法について詳しく解説していきました。
- カルテを書くことは医師の義務である
- カルテは1号用紙・2号用紙が主に使われている
- 保存期間は5年間の義務がある
- これからは電子カルテが一般的になる
カルテを書くことは医師の義務であり、カルテを保存することは医療機関の義務です。
現在では紙カルテから電子カルテへ移行する医療機関が多いですが、電子カルテであっても、基本的に記載内容は紙カルテと変わりありません。
医療事務を目指している方であれば、カルテの読み方は必須スキルです。ぜひ、正しい知識を身につけて、一歩先をゆく医療事務になりましょう。
この記事が少しでもお役に立てたのであれば、嬉しいです。
以上、元ヤン次女でした。
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